無線 LAN(Wi-Fi) - スマートフォンの選び方

最終更新日 2023年09月07日

無線 LAN の選び方

スマートフォンで通信を行う際は、基本的に携帯電話網を利用、すなわち契約した通信サービスを利用して通信を行いますが、無線 LAN を利用した通信もできます。無線 LAN は、Wi-Fi とも呼ばれます。

スマートフォンに無線 LAN が搭載されていないと、無線 LAN を利用できませんが、スマートフォンに無線 LAN 非搭載モデルはありません。もしかしたら、無線 LAN 非搭載モデルがあるかもしれませんが、無線 LAN は必須ではなくても必要性が高いので、無線 LAN 非搭載モデルがあったとしても選ばない方が良いです。

スマートフォンでの無線 LAN の使い方は人それぞれ違いますが、利用中の通信サービスの通信量が制限に到達してしまう事を遅らせるために無線 LAN は重宝します。

利用中の通信サービスで通信速度が低下したり通信が不安定になった時にも、無線 LAN が役立ちます。基本的に、通信サービスで通信するより、無線 LAN で通信する方がバッテリー消費量が小さくなりますので、バッテリー駆動時間を延ばしたい時にも、無線 LAN が役立ちます。

無線 LAN では、規格によって通信速度や通信の安定性が異なってきますので、対応している規格を確認して選ぶ事が重要です。

以下では、子機と親機という用語を使用する場合がありますが、無線 LAN では子機が親機を通じてインターネットに接続し通信を行います。スマートフォンは子機であり、他に無線 LAN が搭載されたパソコンやタブレット端末、携帯ゲーム機等も子機となります。無線 LAN ルーター等が、親機となります。

無線 LAN 規格の選び方

主な無線 LAN 規格

以下は、スマートフォンに搭載される無線 LAN に見られる主な規格です。


IEEE802.11g IEEE802.11b IEEE802.11a
周波数帯 2.4GHz 帯 2.4GHz 帯 5.2GHz 帯
最高
通信速度
54Mbps 11Mbps 54Mbps
最高
実効速度
20Mbps〜25Mbps 4Mbps〜5Mbps 20Mbps〜25Mbps
周波数
干渉性
他の無線機器や家電(電子レンジなど)から発生する電波と干渉しやすい。 他の無線機器や家電(電子レンジなど)から発生する電波と干渉しやすい。 干渉しにくい。
通信距離 遠距離に強い。 遠距離に強い。 遠距離に弱い。
透過性
(障害物)
障害物に強い。 障害物に強い。 障害物に弱い。


IEEE802.11n IEEE802.11ac
周波数帯 2.4GHz 帯
5.2GHz 帯
5.2GHz 帯
最高
通信速度
600Mbps (※1) 6900Mbps(6.0Gbps)
最高
実効速度
100Mbps 以上 1000Mbps(1Gbps)以上
周波数
干渉性
・2.4GHz 帯使用時
他の無線機器や家電(電子レンジなど)から発生する電波と干渉しやすい。
・5.2GHz 帯使用時
干渉しにくい。
干渉しにくい。
通信距離 ・2.4GHz 帯使用時
遠距離に強い。
・5.2GHz 帯使用時
遠距離に弱い。
遠距離に強い。
透過性
(障害物)
・2.4GHz 帯使用時
障害物に強い。
・5.2GHz 帯使用時
障害物に弱い。
障害物に強い。

※1 通信速度高速化技術チャネルボンディング(利用チャネル数2)、MIMO(利用アンテナ数4本)対応時

ここで注目すべき点は、最高実効速度、周波数干渉性、通信距離、透過性(障害物)です。

最高実効速度は、実際に通信を行った場合の通信速度の最大値であり、最高実効速度は通信環境、スマートフォン、スマートフォンの通信相手となる親機によって異なります。最高通信速度は、理論上の通信速度の最大値です。

周波数干渉性、通信距離、透過性(障害物)は、主に通信の安定性に関わってきます。通信が不安定になると、安定時に出ていた通信速度が低下したり、通信が切れたりします。

無線 LAN 規格の対応パターン

無線 LAN の規格は多いですが、互換性を維持している規格があるため、規格の対応パターンは少ないです。2016年2月19日時点では、以下の対応パターンが見られます。

IEEE802.11b/g/n ・主に価格が安いスマートフォンに見られる対応パターン
・IEEE802.11n に対応しているので、十分快適な通信が可能
・IEEE802.11n に対応していても周波数帯 5.2GHz は使えない
IEEE802.11a/b/g/n ・主に価格が安いスマートフォンに見られる対応パターン
・IEEE802.11n に対応しているので、十分快適な通信が可能
IEEE802.11a/b/g/n/ac ・標準的に見られる対応パターン
・IEEE802.11ac に対応しているので、最も快適な通信が可能

最もおすすめな対応パターンは、IEEE802.11ac を含む IEEE802.11a/b/g/n/ac です。IEEE802.11ac は、他の規格よりも圧倒的に通信速度が速く、周波数干渉性、通信距離、透過性(障害物)ではそれぞれ干渉しにくい、遠距離に強い、障害物に強いため、欠点がありません。

IEEE802.11n でも、通信速度は十分速いですが、2.4GHz 帯だと干渉しやすく、2.4GHz 帯の電波を使用する無線機器や、2.4GHz 帯の電波を発生する家電が多い通信環境だと通信が不安定になりやすいです。

5.2GHz 帯だと遠距離と障害物に弱いため、スマートフォンと親機との距離が遠かったり、スマートフォンと親機の間に壁等の障害物が多いと、通信が不安定になりやすいです。

しかし、あまり神経質になる必要はなく、通信環境によりますが、IEEE802.11n でも十分快適に通信できる可能性が高いです。通信環境によっては IEEE802.11ac じゃないと快適に通信できませんが、そのような通信環境でスマートフォンを使用する可能性を考慮し、対応パターンは IEEE802.11ac を含む IEEE802.11a/b/g/n/ac を選ぶのがおすすめです。

IEEE802.11ac に対応している親機と接続する事がなければ無用ですが、将来 IEEE802.11ac で接続して使用する可能性を考慮して、IEEE802.11a/b/g/n/ac に対応しているスマートフォンを選ぶのがおすすめです。

価格が安いスマートフォンや古いスマートフォンだと、IEEE802.11ac に対応していないモデルが多いですが、このようなモデルを選ぶなら妥協が必要です。IEEE802.11ac に対応していなくても、IEEE802.11n に対応しているなら十分ですので、あまり心配する必要はありません。

無線 LAN 規格の互換性

子機と親機が無線 LAN を利用して通信するなら、基本的にお互いに規格が一致している必要がありますが、互換性を維持している規格があるため、以下の組み合わせ一覧のように、子機と親機で規格が異なっていても通信できます。ただし、最高通信速度(最高実効速度)が遅い方の規格に合わせられます。

子機\親機 b g a n ac
2.4GHz 帯 5.2GHz 帯
b × × ×
g × × ×
a × × ×
n 2.4GHz 帯 × × ×
5.2GHz 帯 × × ×
ac × × ×
○通信可能
×通信不可

上記において、無線 LAN 規格の対応パターンを記載しましたが、スマートフォンに限らず無線 LAN ルーター等の親機にも当てはまりますので、親機と全く通信できない対応パターンを選んでしまう事はありません。

例えば、IEEE802.11b/g/n に対応しているスマートフォンを選んだ場合、もし親機が IEEE802.11a/n/ac(nは 5.2GHz 帯のみ)に対応していると、その親機と選んだスマートフォンは通信できませんが、そのような親機はありません。親機も子機も、互換性の問題で接続できない事がないように、複数の規格に対応しています。