電源ユニットの系統

最終更新日 2023年09月07日

電源ユニットの系統

電源ユニットの系統には、+3.3V、+5V、+12V、-12V、+5VSBがあります。

電源ユニットによっては、+12Vが2系統以上あります。

+12Vが2系統以上あると、1系統ある場合と比べて各+12Vの最大出力が小さい傾向があります。

電源ユニットの系統の最大出力

規格がATXの電源ユニットは、+5VSB以外の系統が出力可能な最大電流を規定していません。

ATX以外の規格に関しては未確認です。

出力可能な最大電流が違うと、最大出力も違います。

系統の最大出力は、電源ユニットによって違います。

電源ユニットの最大出力が同じでも、各系統の最大出力が違うことがあります。

電源ユニットの系統の最大出力合計と総合最大出力

電力の変換の流れ

電源コンセントから100Vの交流電力が来ますが、パソコンでは様々な電圧の直流電力が必要であり、電源ユニットが変換します。

直流電力に変換後、各系統が出力する電力に変換し生成します。

まずスタンバイ時やその復帰時に出力する+5VSB用の電力を生成しますが、それ以外のときは生成しません。

そのため、+5VSBの最大出力は総合最大出力に含まれていません。

例えば、+5VSBの最大出力が15W、総合最大出力が500Wの場合、500Wに15W分が含まれていません。

+5VSB以外に+12V、-12Vの電力を生成します。

+12Vの電力から、+3.3V、+5Vの電力を生成します。

例えば、+12Vの最大出力が500Wでも+3.3Vと+5Vで100Wを出力すると、このときの+12Vの最大出力が400Wになります。

以上が、各系統の最大出力合計と総合最大出力が合わない理由の1つです。

上記を考慮すると、+12V、-12Vの最大出力合計と総合最大出力が一致するはずですが、あくまでも理論上であり実際には一致しませんが、大体一致します。

系統の柔軟性

系統で出力不足が発生しにくいように柔軟性があることも理由の1つであり、系統の最大出力合計が総合最大出力よりも大きくなります。

実際の電源ユニットに即した説明ではなく、あくまでも単純なイメージで説明しますが、例えば系統Aの最大出力が300W、系統Bの最大出力が300Wであり、系統の最大出力合計が600Wですが、総合最大出力が300Wの電源ユニットがあるとします。

もし系統の最大出力合計と総合最大出力が同じで、系統Aの最大出力が150W、系統Bの最大出力が150Wだと、系統Aで200W、系統Bで100W必要とする場合に対応できず系統Aで出力不足になります。

系統Aの最大出力が300W、系統Bの最大出力が300Wにしておけば、対応でき出力不足が発生しません。

電源ユニットの系統の出力不足

電源ユニットの総合最大出力が十分であり不足していなくても、各系統に最大出力がありますので、系統で出力不足にあることがあります。

系統で出力不足になると、本来の性能を発揮しなかったり、正常に動作しないトラブルが発生することがあります。

出力不足が発生しないようにするには、総合最大出力が重要ですが、各系統の最大出力も重要です。

+12Vは消費電力が大きいCPU、ビデオカードに電力を供給しますので、+12Vが出力不足になることが多いです。

+12Vが1系統ではなく複数系統あると、各+12Vの最大出力が小さくなり、出力不足が発生しやすいです。

出力不足にならないことを重視している電源ユニットは、+12Vが1系統です。

各系統の出力電圧の許容誤差

ATX電源の規格が規定する許容誤差

ATX電源の規格では各系統の出力電圧の許容誤差を規定しており、-12V系統のみ許容誤差は±10%、他の系統の許容誤差は±5%です。

出力電圧が許容範囲を超えて変動する場合、不良か故障の可能性があります。

系統 出力電圧
許容範囲
+3.3V +3.14〜+3.47V
+5V +4.75〜+5.25V
+12V +11.4〜+12.6V
-12V -10.8〜-13.2V
+5VSB +4.75〜+5.25V

出力電圧変動幅が大きい製品

許容範囲内に収まる電源ユニットに限っても、出力電圧の変動幅が製品によって違います。

一般的には価格が高い製品ほど変動幅が小さく、+12Vだと価格が高い方だと1%程度、価格が安い方だと5%に近いです。

あらゆる電源ユニットを調べたわけではありませんが、仕様に電圧変動幅が記載されていることがあまりなく、記載があるとしても例えば「電圧変動幅は0.5%以内」と記載されている程度です。

仕様に電圧変動幅の記載がない価格が安い製品を選び、電圧変動幅を計測したところ、許容範囲外になりそうなくらい変動幅が大きかったですが、動作が不安定になりませんでした。

電源ユニット以外のPCパーツの組み合わせや、用途によっては不安定になった可能性があります。

出力電圧変動幅を抑える技術

メーカーによっては出力電圧変動幅を抑える技術を開発して製品に採用しており、例えばSeasonic(シーソニック)が開発したMTLR(Micro Tolerance Load Regulation)があります。

MTLR採用製品は、出力電圧変動幅を0.5%や1%に抑えています。

出力電圧変動幅が大きいと、パソコンの電源が突然落ちる等、パソコンの動作が不安定になる可能性が高まります。

出力電圧変動幅が小さいと、パソコンの動作の安定性が高まります。

特に出力電力が大きい+12Vが重要であり、変動幅が1%等、小さいのが望ましいです。

ATX電源の規格が規定している許容誤差の範囲内でも十分ですが、組み合わせて使用するPCパーツによっては動作が不安定になり、出力電圧変動幅が小さい製品を使用すると解決する可能性があります。

電源ユニットの系統の+5V

マザーボードのIC(集積回路)、HDD等の各種ドライブ、拡張スロットのPCI、CPUへの電力供給に使用します。

電源ユニットの系統の+12V

+12Vの重要性

電源ユニットの系統の+12Vは、HDD、光学ドライブ、冷却ファン等のモーターへの電力供給に使用しますが、CPU、ビデオカードにも電力供給する重要な系統です。

CPU、ビデオカードは消費電力が大きく、+12Vが出力不足になりやすいので+12Vが重要な系統です。

+12Vが出力不足になると、パソコンが本来の性能を発揮しない、電源が突然落ちる、突然再起動する等のトラブルが発生することがあります。

消費電力が大きい高性能CPU、高性能ビデオカードを搭載する場合は、CPU、ビデオカードの消費電力を見積もり、+12Vの最大出力を確認し、出力不足にならないように気をつける必要があります。

+12Vのシングルレール、マルチレール

+12Vが1系統あることをシングルレール(シングルレーン)、+12Vが複数系統あることをマルチレール(マルチレーン)と呼びます。

マルチレールにする主な理由は、マザーボードとビデオカードで+12V系統を分け、ビデオカードへの出力が大きく変化してもマザーボードへの出力に対し影響を小さくするためです。

マルチレールはシングルレールよりも+12Vの1系統に流れる電流が小さいので、安定性が高いです。

CPU、ビデオカードは負荷が大きく変わり流れる電流も大きく変わることがありますが、マルチレールだと特定の+12Vで電流が大きく変わっても他の+12Vへの影響が小さく、安定性が高くなります。

マルチレールの方が安定性で有利ですが、シングルレールだと問題が発生するほど安定性が低くありません。

シングルレールで電流が大きく変化しても電圧変動幅を小さくする技術が進歩しており、マルチレールにする必要性が低いほどです。

消費電力が大きい高性能CPU、高性能ビデオカード向けに+12Vの最大出力が大きくても、シングルレールを採用している電源ユニットが多いほどです。

マルチレールと出力不足

マルチレールだと、複数ある+12Vの中で1系統が出力不足になるトラブルに悩まされる可能性が出てきます。

例えば、マルチレールで+12Vが2系統あり、それぞれの最大出力が250Wの場合、消費電力が300Wのビデオカードを使用すると出力不足になります。

シングルレールで+12Vが1系統あり、最大出力が500Wの場合、出力不足になりません。

1つのPCパーツの消費電力が1系統の最大出力を超えなくても、複数のPCパーツの合計消費電力が超えてしまい出力不足になる場合もあります。

その場合、シングルレールと違ってマルチレールでは+12Vの各系統が出力不足にならないように考えて接続する必要があります。

消費電力が大きいCPUやビデオカードを使用したり、さらにオーバークロックさせて消費電力が上がる場合、シングルレールが適しています。

シングルレールが増えた理由

昔はマルチレールが多かったですが、今ではシングルレールが多くなりました。

インテルのHaswellマイクロアーキテクチャーのCPUでは、消費電力が低いステートを利用するには、CPUへの最小出力電流が0.05A以下を満たさなければならない条件があります。

マルチレールよりシングルレールの方が条件を満たしやすいのがきっかけとなり、シングルレールが多くなりました。

シングルレールだと+12Vの最小出力電流が0.05A以下ではなくても、ストレージ、マザーボード、ビデオカード等、他のPCパーツが電力を消費するため、CPUへの最小出力電流が0.05A以下になる可能性が高いです。

マルチレールの場合、各系統の電力供給先によりますが、仮にCPUのみだとCPUへの最小出力電流が0.05A以下になりません。

1系統に集約するのは困難のため、他のPCパーツが消費する電力が減り、CPUへの最小出力電流が0.05A以下になる可能性が低いです。

昔と違って今では最小出力電流が0.05A以下の+12Vが普及しており、マルチレールでも問題ありません。

+12V1、+12V2

+12Vが2系統あり、それぞれ+12V1、+12V2とします。各系統が電力供給するPCパーツは規格で決まっています。

規格がATX 12Vの場合、+12V1はCPU以外(マザーボード、ストレージ等)用、+12V2はCPU用です。規格がEPS 12Vの場合、+12V1はCPU用、+12V2はCPU以外用です。

電源ユニットの系統の-12V

昔はサウンドカード、PCIスロット、RS-232等への電力供給に使用する場合がありましたが、今ではほとんど使用していません。

電源ユニットの系統の-5V

昔はメインメモリー等への電力供給に使用する場合がありましたが、今では廃れており多くの電源ユニットに-5Vがありません。

電源ユニットの系統の+5VSB

パソコンが省電力状態のときに電力を供給するために使用します。省電力状態にする機能は、サスペンド、スタンバイ、スリープ等と呼びます。省電力状態のときでも、メインメモリーがデータを保持するために電力を供給する必要があります。USBへの電力供給も必要です。

メインメモリー搭載枚数が多いパソコンでこの機能を利用する場合、+5VSBの出力が大きい必要があります。パソコンにUSB接続してある周辺機器が多い場合でも同様です。出力が不足すると、省電力状態への移行、その復帰に失敗する場合があります。ATX 12V v2.2では出力が最低でも1.0A必要とし、2.0A以上を推奨しています。


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