メインメモリーのマルチチャンネル
最終更新日
2023年09月07日
メインメモリーのマルチチャンネルとは
基礎
マルチチャンネルとは、メインメモリーとメモリーコントローラーを接続するメモリーチャンネルを複数にする技術です。メモリーチャンネルとは、メインメモリーとメモリーコントローラー間にてデータ転送を行う経路です。パソコンではメモリーチャンネルの幅が64ビットです。他のコンピューターでは64ビットとは限りません。数字が大きいほど一度に多くのデータを転送できます。データ転送速度
メモリーチャンネルを複数にすると、その幅が広くなりデータ転送速度が向上します。例えばメモリーチャンネル2つでその幅が128ビットになりデータ転送速度が2倍、3つで192ビットになり3倍、4つで256ビットになり4倍です。呼び方
メモリーチャンネルが1つの場合はシングルチャンネル、2つの場合はデュアルチャンネル、3つの場合はトリプルチャンネル、4つの場合はクアッドチャンネルと呼びます。必要枚数
メインメモリー1枚あたりチャンネル幅が64ビットなので、デュアルチャンネル利用に2枚以上、トリプルチャンネル利用に3枚以上、クアッドチャンネル利用に4枚以上が必要です。マルチチャンネルとCPU、マザーボード
マルチチャンネルへの対応
マルチチャンネルを利用するには、CPUとマザーボードがマルチチャンネルに対応している必要があります。対応していない場合、複数のメインメモリーを搭載してもマルチチャンネルを利用できずシングルチャンネルになります。CPUとマザーボードがマルチチャンネルの種類の全てに対応しているとは限りません。デュアルチャンネルにまで対応している場合、トリプルチャンネルやクアッドチャンネルを利用できません。トリプルチャンネルにまで対応している場合、デュアルチャンネルを利用できますが、クアッドチャンネルを利用できません。
メモリースロット
マルチチャンネル利用時に装着するメモリースロットの位置は、取扱説明書(マニュアル)の確認が必要です。多くのマザーボードでは、装着位置がわかりやすいようにメモリースロットに色が付いています。取扱説明書(マニュアル)がない場合、とりあえず同じ色のメモリースロットか違う色のメモリースロットに装着する等して、マルチチャンネル動作するのか確認する方法があります。動作しなければ装着位置を変更します。同じ色に装着するのか異なる色に装着するのか、同じメーカーでも製品によって違います。例えばデュアルチャンネル動作の場合、同じ色に装着すれば動作する場合もあれば、違う色に装着すれば動作する場合もあります。
同じ色か異なる色か、仕様通りに装着したとしても装着位置によっては動作しない場合があります。例えばメモリースロットが6本ありトリプルチャンネル利用時は同じ色に装着するが、特定の片方の色に装着しないと動作しない場合があります。
マルチチャンネル動作可能な組み合わせ
同じメーカーかつ同じ型番
マルチチャンネルを利用するには、原則的には同じメインメモリーを組み合わせます。同じメインメモリーとは、同じメーカーかつ同じ型番のメインメモリーです。同じではないメインメモリーを組み合わせてもマルチチャンネルで動作する可能性がありますが、実際に試してみないとわかりません。マルチチャンネルで動作しても動作が不安定、本来のデータ転送速度向上効果が出ない等のトラブルが発生する場合があります。ノーブランド
ノーブランドのメインメモリーだと、同じメーカーかつ同じ型番に相当でもマルチチャンネル動作しない場合があります。マザーボードの某メーカーから聞いた話によると、ノーブランドのメインメモリーの中には質が低く、同じメーカーかつ同じ型番に相当でも製品によって電気信号のタイミングの違いが大きい場合があり、これが相性問題の原因になりマルチチャンネル動作しないに限らず、シングルチャンネル動作もしない場合があるそうです。メーカーや型番が異なるが仕様が同じ
同じメーカーかつ同じ型番ではなくても仕様が同じメインメモリーを組み合わせる場合は、マルチチャンネルで動作する可能性が高いです。以下の組み合わせ条件を満たす場合は仕様が同じなので、マルチチャンネルで動作する可能性が高いです。条件 | 補足 |
---|---|
メインメモリー 容量が同じ |
・メインメモリー上のメモリチップの容量を全て足し合わせた容量 |
メモリチップ 容量が同じ |
・メインメモリー表面に見える黒い長方形の部品がメモリチップ ・仕様に未記載の場合が多いがメインメモリー容量をメモリチップ数で割るとわかる |
メモリチップ 実装面が同じ |
・メモリチップが片面のみがシングルサイド、両面がダブルサイド ・仕様に未記載の場合が多いが外観からわかる |
ランクが同じ | ・シングルサイドならシングルランク、ダブルサイドならデュアルランクの場合が多い ・仕様に未記載の場合が多い ・パソコン向けメインメモリーの多くがシングルランク |
モジュール規格 (チップ規格)が同じ |
・モジュール規格が同じならチップ規格も同じであり逆も成り立つ |
CASレイテンシ、メモリータイミングが同じ | ・メモリータイミングは仕様に未記載の場合が多い |
UnbufferedかRegisteredで統一 | ・パソコン向けメインメモリーはUnbuffered |
EEC非対応かECC対応で統一 | ・パソコン向けメインメモリーはECC非対応 |
上記の組み合わせ条件を満たしても仕様に表れてこない違いが影響し、マルチチャンネルで動作しない場合があります。その場合は原因の特定が困難です。
一部の仕様が異なる
一部の仕様が異なるメインメモリーを組み合わせる場合でも、マルチチャンネルで動作する可能性があります。どこまで仕様が異なっても動作するのかはマザーボードによって決まりす。容量が異なるメインメモリーを組み合わせた場合、マザーボードによっては容量が少ない方までマルチチャンネル動作となり、容量差分はシングルチャンネル動作になります。例えば1GBと2GBを組み合わせた場合、両者1GBまでデュアルチャンネル動作できる場合があります。片方の残り1GBはシングルチャンネル動作です。
モジュール規格(チップ規格)には互換性があり、動作クロック周波数が低い(データ転送速度が遅い)方に合わせて動作できます。同様にCASレイテンシ、メモリータイミングも遅い方に合わせて動作できます。モジュール規格(チップ規格)、CASレイテンシ、メモリータイミングが異なる組み合わせでも実質仕様が同じになり、マルチチャンネルで動作する可能性が高いです。
シンメトリック、アシンメトリック
マルチチャンネルのシンメトリック、アシンメトリックとは
シンメトリック・マルチチャンネルとは、容量が同じ組み合わせのマルチチャンネルです。アシンメトリック・マルチチャンネルとは、容量が異なる組み合わせのマルチチャンネルです。ここではデュアルチャンネルに限定し解説しますが、トリプルチャンネル、クアッドチャンネルも同様です。デュアルチャンネルのシンメトリック、アシンメトリックの例
容量が1GBのメインメモリー2枚を組み合わせると、シンメトリック・デュアルチャンネルです。容量が1GBのメインメモリーと容量が2GBのメインメモリーを組み合わせると、アシンメトリック・デュアルチャンネルです。アシンメトリック・デュアルチャンネルでは容量が小さい方(例では1GB)までデュアルチャンネルで動作しますが、片方の残りの容量(例では1GB=2GB-1GB)はシングルチャンネルで動作します。マザーボード
CPU、マザーボードがシンメトリック・デュアルチャンネルのみ対応の場合、容量が異なる組み合わせだとデュアルチャンネルで動作できません。CPU、マザーボードがアシンメトリック・デュアルチャンネル対応であれば、シンメトリック・デュアルチャンネルにも対応しています。マルチチャンネル用の複数枚セット
仕様からではわからない違い
同じメーカーかつ同じ型番のメインメモリーでも、仕様からではわからない違いがある場合があります。メインメモリーに限りませんが、PCパーツは製造時期によって部品が変わり同じではない場合があるためです。その場合でもマルチチャンネルで動作しなくなる可能性が非常に低いです。マルチチャンネルで動作するとしても動作が不安定、データ転送速度の向上効果が若干落ちる等のトラブルが発生する可能性も非常に低いです。ロットが同じセット
これらの可能性を無きに等しくする方法があります。マルチチャンネル用の複数枚セットのメインメモリーを使用する方法です。パソコンショップ等が独自に複数枚まとめてセット販売しているメインメモリーではなく、メインメモリーのメーカーがマルチチャンネル用に複数枚セットにしているメインメモリーです。ロットが同じメインメモリーがセットなので、仕様からではわからない違いもありません。マルチチャンネルで動作させるユーザー向けの商品ですが、動作させないユーザーにも推奨できます。マルチチャンネル動作ではなくても、仕様からではわからない違いもないメインメモリーを組み合わせて使用すると、トラブルが発生するリスクが無きに等しくなります。
マルチチャンネルと性能向上
一般的に体感できるほど性能向上しない
シングルチャンネルではデータ転送速度が不足するほどメインメモリーに対しデータ読み書きが大量に発生する場合、マルチチャンネルにより性能が向上する効果が体感できるほど大きくなります。一般的には体感できるほど向上しません。パソコンではマルチチャンネルにより向上したデータ転送速度を活かす処理が少なく、シングルチャンネルのデータ転送速度で十分なためです。CPU内蔵GPU
CPU内蔵GPUの性能が高く、かつ高い負荷がかかる用途に使用するとメインメモリーに対しデータ読み書きが大量に発生するので、マルチチャンネルによる性能向上効果が大きいです。マルチチャンネルにより向上したデータ転送速度を活かせる処理が多くなるためです。例えばゲーム、動画・画像編集等の用途でCPU内蔵GPUに高い負荷がかかると、体感できるほど性能向上する場合があります。RyzenのCPU内蔵GPU
GPUを内蔵するRyzenが登場し、シングルチャンネルではなくデュアルチャンネルが推奨されました。RyzenのCPU内蔵GPUの性能が高く、高い負荷がかかるとシングルチャンネルではデータ転送速度が不足するためです。様々な条件によって性能向上効果の大きさが違いますが、例えば某ゲームのベンチマークスコアが約2倍に向上する、某ゲームの平均フレームレートが1.5〜2倍に向上する等、体感できるほどの性能向上効果が出る場合があります。トラブル
メインメモリーの枚数やランクによっては速度が落ちる
トラブルというほどではないが、マルチチャンネルに使用するメインメモリーの枚数やランクによっては速度が落ちる場合があります。例えばAMDの新ブランドRyzenが登場した当初の製品では、CPU内部のメモリーコントローラーによりデュアルチャンネル利用時は以下の仕様です。
ランク | 枚数 | 速度 |
---|---|---|
デュアルランク | 4枚 | PC4-14900 (DDR4-1866) |
シングルランク | 4枚 | PC4-17000 (DDR4-2133) |
デュアルランク | 2枚 | PC4-19200 (DDR4-2400) |
シングルランク | 2枚 | PC4-21300 (DDR4-2667) |
あくまでもメモリーコントローラーの仕様であり、マザーボードによっては速度が落ちない場合や、落ちるとしてもメモリーコントローラーの仕様よりは落ちない場合があります。マザーボードメーカーによって独自拡張され動作条件が緩和した製品があるためです。
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