デスクトップパソコンレビュー「Raytrek-V XT」

最終更新日 2023年09月07日

ビデオ編集に適した高性能パソコン

パソコンショップのドスパラでは、デスクトップパソコンからノートパソコンまで様々なモデルを販売していますが、その中で動画や画像を扱うクリエイター向けのパソコンも販売しています。

クリエイターがパソコンに求める性能は人によって異なりますが、ドスパラでは様々なニーズに対応できるようクリエイター向けパソコンとして多彩なラインナップをそろえています。

その中で今回は、ビデオ編集に適した Raytrek-V シリーズ中のモデル Raytrek-V XT を使用しました。Raytrek-V XT は、Raytrek-V シリーズの中で真ん中くらいの性能を持つモデルですが、一般向けに販売されているパソコンの中で見れば、高性能パソコンと言えます。

高い性能だけあって、Raytrek-V XT の価格は 13万9980円(税込)と手軽には買えない価格ですが、快適なビデオ編集環境を提供してくれます。

PC ケース

高性能 PC パーツを安心して使える PC ケース

Raytrek-V XT のような高性能パソコンでは、CPU 等の性能が高く発熱量が大きい PC パーツを搭載しているため、PC ケースの冷却性が重要になってきます。冷却性に問題があれば、熱によって PC パーツの温度が上昇し、温度が限界を超えないよう性能の低下や停止を引き起こします。また、PC パーツの温度が高すぎると部品を傷め、寿命の低下や故障の原因となります。

Raytrek-V XT では、そのような心配をする必要がないよう PC ケースはミドルタワーを採用しており、PC ケース内部のスペースが広く、冷却効果に優れたエアフローとなっています。ミドルタワーだと広い設置スペースが必要となりますが、発熱量が大きい高性能 CPU やビデオカードを搭載する Raytrek-V XT を安心して使う事ができます。

冷却性に優れたエアフロー

エアフローについて、PC ケースの各面から詳しく見ていきますと、まず正面は大部分がメッシュとなっており、下の方にある吸気用ファンから外気を取り込むようになっています。さらに底面からも外気を取り込めるようエアインテークがあります。

正面
Raytrek-V XT 正面

底面
Raytrek-V XT 底面

取り込んだ外気は、背面と上面にある排気用ファンと電源ユニット内蔵ファンによって排気される流れとなっています。

たいていのデスクトップパソコンタワー型は、電源ユニットが PC ケース内上部にありますが、Raytrek-V XT では PC ケース内の下部にあるのが特徴で、電源ユニットの効率的な冷却を実現しています。

なぜなら、電源ユニットが PC ケース内の上部にあると、上部には他の PC パーツによって温度が上昇した空気が集まってきますので、PC ケース内の下部にある方が温度が低い空気を冷却に使えるからです。

背面
Raytrek-V XT 背面

上面
Raytrek-V XT 上面

左側面にはエアインテークがあり、基本構成では冷却ファンはありませんが、後に冷却性を高めたい場合に冷却ファンを取り付ける事が可能になっています。また、冷却ファンの取り付けは注文時のカスタマイズでも可能です。

左側面
Raytrek-V XT 左側面

右側面にもエアインテークがあり、こちらはマザーボードの温度上昇を抑えるためにあります。

右側面
Raytrek-V XT 右側面

拡張性が高い

Raytrek-V XT の PC ケースは、冷却性だけでなく拡張性の高さにも優れています。

拡張ベイとして5インチベイが5つ(基本構成で空き3つ)、3.5インチシャドウベイが5つ(基本構成で空き4つ)あるため、後に必要になったらメディアへの書き出し用に使う光学ドライブの追加や、ストレージ容量や性能向上のために HDD や SSD の追加が可能です。 拡張スロットでは、ビデオカードの搭載で占有している PCI Express x16 以外に、PCI Express x1 が3つ(基本構成で空き3つ)、PCI2.0 が2つ(基本構成で空き2つ)ありますので、PCI Express x1 接続のビデオキャプチャーカード等を追加できます。

このように拡張性の高さがありますので、動画編集作業のためにパソコンに機能を追加したり、性能アップをしたくなっても、余裕を持って対応できます。

主要 PC パーツ構成

Raytrek-V XT の PC ケースの次は、主要な PC パーツ構成を見ていきます。

CPU

Raytrek-V XT の大きな特徴は、快適な動画編集作業に欠かせない高性能 CPU を搭載している事です。搭載 CPU は、基本構成で Core i シリーズ第4世代の Core i7 4770K であり、動画編集等の CPU に負荷がかかる処理で強力なパフォーマンスを発揮します。

以下は、Core i7 4770K 含めて、Raytrek-V のシリーズの各モデルで基本構成として搭載している CPU の一覧です。

プロセッサー
ナンバー
コア数 スレッド数 動作周波数 TB 利用時
最大周波数
Core i7 4930K 6コア 12スレッド 3.70GHz 3.90GHz
Core i7 4820K 4コア 8スレッド 3.70GHz 3.90GHz
Core i7 4770K(※) 4コア 8スレッド 3.50GHz 3.90GHz
Core i7 4770 4コア 8スレッド 3.40GHz 3.90GHz
Core i5 4570 4コア 4スレッド 3.20GHz 3.60GHz
(※)Raytrek-V XT 搭載 CPU

快適な動画編集作業を実現するために、どの程度の性能を持つ CPU が必要かは、使用する動画編集ソフトウェアや動画編集作業の内容、扱う動画ファイルのフォーマット等によりますので一概には言えませんが、Raytrek-V XT が搭載する Core i7 4770K であれば、ハイビジョン動画の編集作業を快適に行える性能を持っていると言えます。

メインメモリー

たいていの動画編集ソフトウェアは、使用するメインメモリー容量が大きいため、動画編集作業には大容量メインメモリーが欠かせませんが、Raytrek-V XT の搭載メインメモリーは 8GB と大容量です。

動画編集作業では使用メインメモリー容量が大きくなりがちでも、容量は 8GB もあれば十分と言えますが、使用する動画編集ソフトウェアや動画編集作業内容によっては容量 8GB では足りなくなる恐れが出てきますので、予算に余裕があれば注文時のカスタマイズで容量を 16GB にしておくと良いです。

メインメモリーの増設は、比較的簡単な作業となりますので、後に容量が足りないと感じたらメインメモリーを購入して増設するのもありです。(Raytrek-V XT は、最大 32GB まで容量アップ可)

メインメモリーと他の PC パーツとの間で大量のデータのやり取りをする動画編集等の処理では、メインメモリーの容量だけでなくデータ転送速度も重視したいところですが、Raytrek-V XT は、データ転送速度が高速なメモリー規格 DDR3 SDRAM(PC3-12800)のメインメモリー2枚(4GB×2)のデュアルチャネル構成で、さらにデータ転送速度を高めています。

ストレージ

ストレージは基本構成として HDD を搭載し、容量は 2TB となっています。容量が大きい動画ファイルを大量に扱う事がなければ、2TB もあれば十分と言えます。

動画編集用にパソコンを選ぶなら、HDD ではなく SSD 搭載モデルを選ぶか迷うところかと思いますが、Raytrek-V XT は BTO カスタマイズで SSD 搭載へ変更、もしくは HDD + SSD 両者搭載への変更も可能です。

ただし、SSD の価格は値下がってきたとは言え、HDD と比べると容量あたりの価格はまだまだ高いです。SSD の選択は予算も考慮して慎重に行いたいところです。

もし、SSD の導入を検討するなら、HDD + SSD のハイブリッド構成にし、SSD を OS や動画編集ソフトウェアのインストール、HDD を動画ファイル等のデータ保存用に使うと良いです。

これなら、SSD の容量をそれほど大きくする必要はありませんので安く済みますし、動画編集ソフトウェアによっては編集作業で生成されるファイルの保存場所を SSD に指定する事で、編集作業の効率化が実現できますので、費用対効果は結構大きいです。

光学ドライブ

Raytrek-V XT は、光学ドライブとして DVD スーパーマルチドライブを基本構成で搭載となっていますが、注文時のカスタマイズで BD ドライブへの変更が可能です。

もし、BD から読み出し、または BD へ書き出しを行いたいのであれば、注文時に BD ドライブへ変更しておくと良いです。また、ミドルタワーのため、拡張ベイとして5インチベイが5つ(基本構成で空き3つ)あり、内部スペースが広く作業がしやすいので、別途で BD ドライブを用意して増設する事も可能です。

ビデオカード

Raytrek-V XT のビデオカードは、ビデオチップ GeForce GTX 760 を搭載する製品となっており、高い性能を持っています。

GeForce GTX 760 は、PC ゲーム等に向いた高性能なビデオチップですが、そこまで価格は高くなく(ビデオチップ以外の仕様で価格は変わってきますが、GeForce GTX 760 搭載ビデオカードの実勢価格は約3万円)、コストパフォーマンスが高いです。

CPU と同様にビデオカードについても、快適な動画編集作業を実現するために、どの程度の性能が必要かは一概には言えませんが、GeForce GTX 760 ほどの性能があれば、ハイビジョン動画の編集も十分快適に行える性能があります。

電源ユニット

Raytrek-V XT は CPU をはじめとして様々な高性能 PC パーツを搭載しており、十分な容量の電源ユニットが必要になりますが、基本構成で 500W の十分な容量の電源ユニットを搭載しています。

また、電源ユニットは、様々なメーカーやパソコンショップで採用されている AcBel(アクベル)社の 80 PLUS の認証(80 PLUS ランクは 80 PLUS ブロンズ)を受けている製品となっており、信頼性が高く、安心して長時間の動作編集作業ができます。

外部インターフェース

主要 PC パーツ構成の次は、外部インターフェースについて見ていきます。

前面

パソコン前面には、USB が4つ(USB2.0×4)、マイク入力端子、ヘッドフォン出力端子があります。

USB2.0 よりもデータ転送速度が速い USB3.0 に対応している外付けストレージ等と接続して、大容量ファイルを高速にやり取りしたいなら USB3.0 が無いのが気になりますが、背面の方に USB3.0 があります。

USB3.0 対応のポータブルハードディスク等を頻繁に抜き差しするなら、USB3.0 が前面にあれば使い勝手が向上しますが、USB 延長ケーブルを導入すれば背面の USB3.0 を前面の方へ持ってこれますので、背面に USB3.0 があれば十分と言えます。

背面

パソコン背面には、USB が6つ(USB2.0×2、USB3.0×4)、映像出力端子として DVI-I、DVI-D、HDMI、DisplayPort、サウンド関連の端子としてマイク入力、ライン入力、ライン出力×4、他に LAN と PS/2 があります。

ビデオ編集等に使うなら映像出力端子を重視したいですが、デジタル接続可能な各出力端子がそろっており、DVI-I もあるため、デジタル接続可能な外部ディスプレイが無く、アナログ接続のみの外部ディスプレイがある場合でも対応できます。

また、2画面同時出力に対応しているため、2つの外部ディスプレイを利用して効率的な動画編集作業を実現できます。

動画編集作業での実力

今回 Raytrek-V XT で使用した主な動画編集ソフトウェアは、grass valley(グラスバレー)社の EDIUS(エディウス)です。(製品は、EDIUS Pro 7)

EDIUS は、ビデオチップよりも CPU に最適化する事を重視して作られており、CPU の性能が高い Raytrek-V XT と相性が良いです。

ハイビジョン動画の快適な編集作業を実現

動画編集作業では、解像度が高い動画を扱うほど、パソコンにかかる負荷が高くなります。なぜなら、解像度が高いほど動画のデータ量は大きくなり、処理が必要なデータ量が増えるからです。

最近では、1280×720 以上の解像度を持つハイビジョン動画の撮影や再生環境が普及した事もあり、ハイビジョン動画の編集をパソコンで行う事が珍しくなくなったと思いますので、今回はハイビジョン動画の中で解像度 1920×1080 を持つフルハイビジョン動画の編集を試してみました。

まず Raytrek-V XT で動画編集を行うと、パソコンの性能不足を実感する事は無く、余裕すら感じます。タイムライン上に3つや4つの動画が平行に並ぶ形になり、各動画に様々なエフェクトが適用されてくると、さすがにプレビュー表示でややもたつきが見られますが、プレビュー表示での確認に大きな支障を来たすほどではありません。

簡易な動画編集であれば、タイムライン上で複数の動画が重なり合うのは、複数の動画を重ねてトランジションを行う程度だと思いますので、簡易な動画編集であれば Raytrek-V XT が持つ性能ならハイビジョン動画をストレス無く快適に編集できると言えると思います。複雑で高度な動画編集であっても、ストレスに感じるほど処理のもたつきは無く、スムーズに動画編集作業ができますので、Raytrek-V XT は十分満足できる性能があります。

また、Raytrek-V XT の搭載 CPU である Core i7 4770K のコア数とスレッド数は 4コア8スレッドですが、タイムライン上で動画が3つ重ねてプレビュー表示すると、CPU の使用率は全8スレッドで常に 100% な状態が続きます。動画が2つでも、常に 70% 〜 90% と高い使用率になります。

そのため、もし予算に余裕があり、タイムライン上で動画が重なり合う事が多く、様々なエフェクトを適用する事が多くなるような高度な動画編集を行うなら、余裕ある性能にするために、さらに CPU の性能が高いモデルを選ぶと良さそうです。Raytrek-V シリーズには、Raytrek-V XT よりもさらに高い性能の CPU を搭載するモデルがあります。

4K 動画の編集だと処理の重さを感じる

ハイビジョンを超える解像度 3840 × 2160 を持つ 4K 動画は、まだ撮影や再生環境すら普及していない段階ですが、4K 動画の編集作業も行ってみました。

4K の動画ファイルには、RAW 形式を含めて様々な形式が存在しますが、その中の一つにソニーが開発したビデオフォーマット XAVC S 形式の動画ファイルがあります。高効率の圧縮処理によって動画ファイル容量が軽くなっていますが、それでもハイビジョン動画と比べると重いです。

今回は、XAVC S 形式の動画ファイルの編集を行ってみましたが、処理の重さを感じるのは否定できず、Raytrek-V XT では少なくとも余裕ある性能とは言えません。タイムライン上に1つ動画を配置し、特にエフェクトの適用や加工をしていなくても、プレビュー表示の際にもたつきを感じます。

多少のもたつきに我慢でき、簡易な動画編集であれば Raytrek-V XT の性能で妥協はできそうですが、4K 動画をストレス無く快適に編集するためには、もっと性能が高いモデルを選んだ方が良いと言えます。

そのためには、価格が高くなりますが、業務用 CPU の Xeon、業務用ビデオチップ Quadro や FirePro のビデオカードを搭載するモデルを選びたいところです。このようなモデルは主に法人向けに業務用パソコンとして販売されていますが、ドスパラでは Raytrek-V シリーズ以外に、Xeon、Quadro を搭載するモデルを個人向けに販売しています。

総評

Raytrek-V XT は、動画編集を快適に行うために必要な性能を備えています。特に動画編集にとって最重要と言える CPU の性能に特化しているため、高い解像度を持つフルハイビジョン動画の編集でも、ストレス無く快適に編集できます。

これだけの性能があれば、動画編集以外の一般的な使用用途であれば性能に不足を感じる事はなく、画像編集や PC ゲームのプレイも快適にできます。

さらにパソコンの機能や性能を強化したくなっても、Raytrek-V XT は拡張性の高いミドルタワーの PC ケースを採用していますので、後にメインメモリーの増設や SSD の増設、ビデオカードの交換等を行えます。

いずれ普及していくだろう 4K 動画の編集になると、Raytrek-V XT の性能では物足りなさを感じますが、4K 動画の編集を行う必要が無ければ、動画編集に使うなら Raytrek-V XT の性能で十分と言えます。

もし、4K 動画の編集も快適に行いたいのであれば、ドスパラではさらに高性能なクリエイター向けパソコンを販売していますので、そちらを選ぶ事を検討すると良いです。


キャンペーン情報(PR)
富士通
シークレットクーポン
特別割引のクーポン
(キャンペーン実施中)


レビュー特集
レビュー記事一覧